当クリニック院長より皆様へのご挨拶

 長年、病院での精神科臨床に携わっていた私が、もっと、メンタルヘルス全般、できれば精神疾患の予防に貢献できればとの想いで、2004年5月に開業しました。

 

 名前で示されるように、当院は「ストレスケア235」と「メンタルクリニックMatoba」に分かれています。

 

 メンタルクリニックは、保険診療を主体にした、医療機関です。日常的に診療を行っています。基本的に、病気の回復は、本人の回復力によるものが大きいというのが私の信条です。ストレスに対処するにも、病気から回復するにも、本人が能動的であるという事は、とても大事なことです。

 

 そういう信念から、私の仕事は、回復しやすいように専門技術を駆使すること、たとえば、不快な症状を和らげること、本人の希望する形の回復への道案内をしてあげること、本人が持っているパワーに気づかせてあげること、隠れた力を表に出してあげること等だと考えています。病気に圧倒されて、自分のパワーが涸れたように感じている人達に、自分にも力があったことを認識してもらうのが、治療かもしれないと思います。

 

 ただ、病気の種類によっては、どうしても薬を手放してはいけないものもあります。そういう場合は、薬を眼鏡や補聴器・義足のようなものと考えていただけるよう、関わっていきたいと思っています。

 

 

 現在、精神疾患に関しては、Bio-Psycho-Social Treatment(生物−心理−社会的治療)として、トータルな治療が勧められています。生物学的な助けとしての薬物療法、心理学的な関わりとしての各種精神療法、そして、社会的な関わりとしての心理教育・啓蒙活動・SST(Social Skills Training)などがあります。

 

 クリニックだけでの関わりでは、なかなか社会的な面まで関わることができません。社会的な関わりを可能にしたいと思って、医療機関とは別にストレスケア235を併設しました。まだまだ、始まったばかりで、目標とする形までは遠いですが、第一歩として、「心のフィットネス講座」を始めています。体の健康を維持・増進するのと同様に、心の健康も積極的に保ち、より健康に生活できるように…との思いを込めて、フィットネス講座と名付けました。5年間程続けましたが、現在は休止しております。代わりに「誰でも参加できるSST」を毎月第4日曜日に開催することにしています。

 

こころの健康を保つために大切なこと、それは身体の健康にもつながるものです。

規則正しい生活、十分な睡眠・食事・休息、疲れや体からの不調のサインに気づくこと、気づいたら、それらがひどくならないように対処すること、生き甲斐、人から認められること、誰かの役に立っているという感覚、自分を表現できていること、小さな幸せに気づくこと、自分の持っているもの、自分のできていることに目を向けること、柔軟な考え方、足るを知ること、バランスをとること・・etc.

精神的な病にかかったという事は、今までのやり方、考え方では、状況を乗り越える事が難しかったという事だと思っています。乗り越えなければならないものが、それほど大きくなければ、今までのやり方で、十分に生活を続けられていたのでしょうが、不幸にも今までのやり方では乗り越え難いことが起こった時に、症状として現れます。確かに、元々タフな人は、大きな出来事も超える事ができるかもしれないし、元々脆弱な人は、より小さな試練でも動揺するかもしれません。けれども、どんなにタフであっても、(もしかしたらタフであるからこそ、)折れてしまう場合があります。病気から回復するという事は、自分自身の対応する力を一段上に上げていく事ではないかと考えています。病気から回復したとき、今までの自分より、より自由で、柔軟で、幸せな生活が送れるようになる事を目指して、治療を進めていきたいと思っています。せっかく病気になったのだから、それを今後に活かさない手はありませんよね。

様々な出来事を変えたり、環境を変えたりする事は、困難ですが、それらに対する自分の考え方を変える事はいくらでも可能です。認知療法の説明の一つは、「気持ちや行動は、何が起こったかで変わるのではない、それをどのように考えたかで変わる」という事です。

 

 30年余の精神科臨床経験をもとに、私の夢の実現に向けて、ひとつの形としたものがこのクリニックです。そして、その夢にのって、一緒に実現してくれようとしてくれているのがスタッフ達です。着実に歩み続けていきたいと思っています。

 

ストレスケア235 & メンタルクリニックMatoba

院長 的場文子