「誰でも参加できるSST」について

ストレスケア235(当院2F施設)では、市民の皆さまが気軽に参加できる「誰でも参加できるSST※」を行っています。

対人関係で、どうやったら自分の気持ちや考えをうまく伝えられるだろうか?

どんな風に、上司や同僚と関わったら良いのだろう?

子供や家族とのコミュニケーションがうまくいかない・・

プロとしての関わり方を学びたい

障害や病気を持つ人と、どのように関わっていったら良いのだろう?

 

上記のような様々な人間関係の悩みを具体的に、ロールプレイをしながら考えていきましょう。

 

担当するのは、SST普及協会の認定講師および、認定講師を目指す、県内屈指の技能を積んだ者たちです。現在山口県の認定講師は4人になりました。その全員がほぼ毎回参加してくれています。

自分の問題を提示したくない方は、見学するだけでも大丈夫です。

ただいくつかのお約束を守っていただく必要がありますし、最初にウォーミングアップと説明がありますので、初めて参加する方は、必ず、開始時間に間に合うよう、お越し下さい。

 

※SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)とは…

コミュニケーションの技能を高める訓練の一つです。相手の気持ちや意図を理解し、自分の気持ちや考えを伝え、人間関係をよりスムーズにしたり、ストレスを少なくしたりする技能・技術を身につけます。

 

開催日時

  

コロナ感染もますます勢いを増してきていますが、感染対策をしながら、実施していきます。

 

日時を変更し、交互に土・日 14時30分からの開始となります。

 

次回は、10月28日(土)    (11月は26日(日)を予定しています)

     当院2F  参加費500円

 

参加希望の方は、当院2Fにある「ストレスケア235」まで直接お越し下さい。
しばらくは事前にご連絡が必要です。
あまり早く来られると、まだ入り口が開いていないことがあります。10~15分前には開けますので、その頃お出でいただくと助かります。
初めて参加される方は説明がありますので、時間に遅れないできていただけると幸いです。

  

 

 

 ソーシャルスキルについて

       

周囲の人々とのかかわりを効果的に行うために、他者からのメッセージを受けとめ(内容・感情ともに)、社会的状況を評価・判断し、自分の意志や感情を相手に伝達する事ができる能力、対人交流の中で、肯定的および否定的な感情を表現でき、しかもその行動の結果で、社会的強化を失わずにすむ能力とのことをソーシャルスキルといいます。そのスキルは、受信・処理・送信の3つの技能からなっています。

ソーシャルスキルの構成要素

社会知覚(受信技能)

送られてきた情報を状況に応じて正確に受け取る能力のことを言います。相手がどのような気持ちで、どのような事を伝えたいのかをきちんと理解する能力です。ここがうまくいかないと、被害的に考えたり、軽く受け止めすぎたりしてしまいます。

社会的問題解決(処理技能)

社会的状況を正確に分析して、効果的な行動反応を抽出する能力のことです。相手の意図に対して、自分の立場、考え、気持ち、倫理観、過去の経験、周りへの影響などを鑑みて、どういう行動を選ぶかを決める段階です。

適応行動能力(送信技能)

抽出した行動反応を効果的に実行する能力のことを言います。きちんと自分の気持ちや考えが伝わるように、言語的・非言語的コミュニケーションに気をつけて、予想通りの効果が得られるように行動します。

 

 

コミュニケーション①    〜傾聴するという事〜

 

 コミュニケーションを支える大切な技能が4つあります。いろいろな技能は、この4つの組み合わせで成り立っているとまで言われています。①傾聴②肯定的な気持ちを表現する③建設的な依頼をする④否定的な気持ちを表現する・・の4つの技能です。本日はその中の「傾聴」についてお話ししましょう。

 傾聴は、人間関係を円滑にするための基盤と言って良いようなものです。相手をきちんと理解するための基本です。きちんと理解してもらえたと感じたら、ようやく、自分も相手の言う事を聞いても良いかと思えるものです。そのためには、相手を理解しようという気持ちが伝わらなくてはなりません。とりあえず、5分から10分間、相手の言う事に自分の意見を差し挟まずに聴こうとしてご覧なさい。結構、難しい事に気がつくでしょう。

 相手はよく聞いてあげているつもりなのに、自分自身は、話を聞いてもらえていないと感じることはありませんか?診療の場面では、しばしばそういうことがあります。例えば、思春期の子供さんが「うちの親は話を全然聞いてくれない」などと言います。親にしてみれば、忙しい中でも時間をとって話を聞いているのにどうして・・・と感じています。よく聞くと、親は、その子にとって良かれと思って、アドバイスをしてしまい、その子の言う事を理解しようというより、無意識に指導してしまっているということがあるようです。

 より良く聴くためには、どういう事に気をつけたら良いでしょう?

<非言語的には・・?>

        体の向きを話す人の方に向ける、相手の方を見る、優しい表情、うなずくなど

<言語的には・・?>

        復唱する、理解した事を言い換えて理解が正しいかどうか確かめる、

        わからない事を質問する、相づちを打つ、共感できる部分は共感する

 

このようにして良く聴いて、相手の言いたい事を理解したあとで、自分の考えを「私は・・・・と思う」というように”I-message”で伝えましょう。

もちろん、穏やかな雰囲気、ゆっくりとした口調などは効果的です。

 

聴いて相手の考えを理解するという事と、その考えに同意するという事は別の事です。相手が「そのように考えている」という事を理解する事です。

 

 

コミュニケーション②     〜肯定的な気持ちを表現する〜

 

 前回はコミュニケーションを支える4つの大切な技能のうち、傾聴についてお話ししました。全てのコミュニケーションの基本です。今回は、「肯定的な気持ちを表現する」事についてお伝えします。

 

 肯定的な気持ちというのは、楽しいとか、うれしいとか、おいしいとか、気持ちがよいとか・・・人と関わっていて、幸せだと感じるような気持ちの事です。また、ねぎらいや感謝など、相手を幸せにするような言葉も含みます。よく、「ありがとう」を「魔法の言葉」という事がありますね。人との関係を円滑にする言葉です。「ありがとう」に限らず、肯定的な気持ちを表現する言葉は、口にする事で、双方を幸せな気持ちにし、関係性を良くします。相手に対して「私は、あなたの事が嫌ではない。コミュニケーションをとるつもりがある」というメッセージを伝えている事になります。また、「あなたの良い所を評価している」事を伝える事にもなります。基本的な信頼感を育みます。子育て中の母親が配偶者に対して一番ありがたいと感じるのは、家事や育児を手伝ってくれる事よりも、「大変だろうに、良くやってくれているね」の一言だという統計があります。(もちろん、実質的な手助けは大切であり、必要ですが)

 感謝の気持ちや、喜んでいる気持ちを表す事は、日本人(特に男性)は苦手な事かもしれません。伝えなくても伝わるものだと思っているかもしれませんが、言葉にする事で一層良く伝わり、うれしくなるものです。

 「今日の夕食おいしかったよ」「きれいに掃除してくれていて、気持ちがよい」「毎日ご苦労様」「今日の洋服はよく似合っているね」「君の報告はわかりやすくて助かる」など、いつも文句ばかり言っている皆様、たまには、良いと思った事を口に出してみませんか?良いと思う事がないって?それは探すのが下手なだけですよ。良い事を当たり前だと考えていませんか?

 

 

コミュニケーション③    〜建設的な依頼をする〜

  

 コミュニケーションの大切な4つの技能を一つずつ説明してきましたが、今回は、その3つ目「建設的な依頼をする」です。

 誰でも、何かをしてほしいと、人に頼んだり、行動を変えてもらうように頼んだりする事が必要な時がありますね。快くやってもらえたり、反発されたり、嫌がられたり、あとでしこりが残ったり・・・また、関係が悪くなるのを恐れて、頼まずに何でも自分ひとりでやろうとして、しんどくなったり・・・人に頼むというのは、意外に難しい事のようです。

 人に頼むというのは、「お願いをする」という事なので、「やってくれて当たり前」の態度は厳禁です。むしろ、「断られて当たり前、やってもらったらラッキー」なのです。そういう気持ちでお願いしましょう。

 ポイントは?

① 笑顔で、明るくソフトな声で、しっかり相手を見て、

② してほしい事をはっきりと、具体的に 伝える

③ そうしてもらったら、どう感じるかを相手に伝える

④ 場合によっては、付加表現を加える

⑤ 決定権は、相手にある事を忘れずに

 

* 付加表現とは、「申し分けありませんが」とか、「お忙しい所」とか事情を説明したりとか、相手の事情を配慮したりとか・・

* もちろん、相手によって、多少の言葉遣いの違いはあるでしょう。上司に頼むか、同僚に頼むか、自分のこどもに頼むか、など。慇懃すぎても失礼ですよね。 

もちろん、受けてもらったら、「ありがとう。助かりました」を忘れずに!

気づいてもらえない、やってくれても良いのに・・など、期待し過ぎると不平不満がたまります。「だめもと」で、具体的にこうしてほしいと建設的なお願いをする事で、あなた自身がすっきりするのでは?

 

「断られるのが怖くて・・」とか、「こんなことを頼んで良いのだろうか・・」などと自己判断し、ためらってしまう方がいらっしゃいます。相手のことを配慮するのは大切ですが、配慮しすぎは人間関係を息苦しくしてしまいます。相手はできなかったら断りますし、(断る自由を相手にあげてください)多少の頼んだり、頼まれたりは、却って、人付き合いを円滑にすることもあります。人のために動くことは、それが過剰に頼られすぎない限り、自己評価をあげることでもあるのです。頼まれるのは問題ないけど、頼むのはどうも・・という支出過剰の方がいらっしゃいます。収支をバランスよく保つことは、健康のために重要です。

 

むしろ、はっきり頼まないまま、相手が察して動いてくれることを期待してしまい、期待通りに動いてくれなかったことでイラつくよりは、ずっとスッキリするのではないでしょうか?

 

コミュニケーション④   〜否定的な気持ちを表現する〜

 

 今回は、一番手強い「否定的な気持ちを表現する」についてお話ししたいと思います。

 誰しも、他の人に対して、こちらが嫌な気持ちになった事を伝えるのはためらわれます。特に仕事の場では、言うべきでない場面もたくさんあります。人間関係を壊してはいけないと感じて、飲み込む事は多々ある事でしょう。むしろ、「何でも言う」事は社会性を損なう事でもあります。ただ、何もかも自分の胸に納めておけば良いものでもありません。堪忍袋がパンパンになって爆破し、必要以上に人間関係を崩してしまったり、周りがひいてしまったり、自己嫌悪に陥ったりするのは、もっと社会生活を妨げてしまいます。同時に、溜め込んでばかりいると、体の方が反応し、身体的、精神的な病を作り出す事だってあるのです。うつ病の根底には、我慢しすぎた怒りの感情がうごめいている事は、日頃経験する事ですし、パニック障害や強迫症状の基になる事もあります。胃潰瘍、胃炎、高血圧、喘息、頻脈、慢性疼痛など、心と関連しやすい身体疾患もたくさんあります。

 時々、否定的な感情を抱くこと自体を「してはいけないこと」として、抑圧してしまうことがあります。感情は、自然に湧いてくるものであり、その感情を否認したり抑圧したりすると、その感情は行き場を求めて、荒れ狂います。否定的な感情を抱えた自分と向かい合って、それに対処することが重要です。

 今までにお伝えした「傾聴」「肯定的な気持ちを表現する」技能は、より円滑な人間関係を築くための技能、「建設的な依頼をする」と「否定的な気持ちを表現する」は、自分のストレスをコントロールするために必要な技能です。

 否定的な気持ちを表現する事は、必ずしも、気持ちを直接ぶつけるという事ではありません。コミュニケーションには、非言語的コミュニケーションと言語的コミュニケーションがありますが、非言語的なものの方が伝わりやすいものです。非言語的に怒っている様子が推測される事は、怒っている事だけが伝わり、何に怒っているのか伝わりません。冷静に何に対して不愉快な気持ちを感じたかを、言葉で伝える事により、感情より内容が伝わる事になります。

 お互いに気持ち良くやろうと一生懸命に努力していても、気分を害したり、不愉快になったりすることはあります。他の人と生活を共にしたり、一緒に仕事をしていたりすると、否定的な気持ちを抱くことがあるのは、極めてありふれたことです。否定的な気持ちの例としては、怒り、悲しみ、不安、心配、悩みなどが挙げられます。上手にそういう気持ちを伝えられたら、口論を避ける事ができる場合もあるし、また、もっと不愉快にならなくて済みます。否定的な気持ちをため込むことによって、相手のことが嫌いになったり、自分の気持ちが沈んだり、憂うつな気分に悩まされたりすることも避けることが可能かもしれません。そのような気持ちを伝える時に、気をつける事として次のような事が挙げられています。

 

<技能のステップ>

1)相手の顔を見る。落ち着いてはっきりと話す。

2)相手のどの行動によって、気持ちが動揺したかを正確に話す  

3)自分がどんな気持ちになったかを伝える。

4)こうしたことが今後起きないようにするためにどうしてほしいか提案する。

                                (ベラック:わかりやすいSSTステップガイド より)

 

言葉ではっきり伝えるので、非言語的な所では、相手とこれからも良い関係を持っていたいのだという事を示す、冷静さ、笑顔を交える事、静かで穏やかな口調、優しい言い方などを忘れないようにして下さい。そして、相手が理解してくれたら、「わかってくれて、ありがとう」を忘れずに!

 

気持ちをきちんと伝えることができることは、自己効能感にも影響します。皆様の幸せな毎日を祈っています。